「定年後も同じ仕事をしているのに低い賃金に抑えるのは違法」というする司法判断が出た。
年金支給開始年齢が引き上げられ、再雇用で働く高齢者は多い。
しかし、同じ仕事内容にも関わらず、賃下げされることが多い。
今回の判決により、定年後再雇用の賃下げはストップできるのか?

定年後再雇用の賃金

年金の支給開始年齢が段階的に65歳まで引き上げられるため、高年齢者雇用安定法では、2006年から企業に対し、支給開始年齢までの雇用確保を義務付けている。

通常、1年契約の契約社員として雇う(再雇用)のが一般的。
この場合、定年前と同様の仕事を任せるケースも多い。
ただ、再雇用者の賃金水準は、平均で定年の68.3%にとどまる。

これは企業の人件費抑制が理由だ。

なぜ、違法とされたのか?

根拠は「労働契約法20条」。

「労働契約法20条」は「有期契約労働者(契約社員など)と無期契約労働者(正社員など)で職務の内容や責任が同じならば、賃金など労働条件に不合理な差をつけることを禁じる。」

判決では、「職務の内容などが全く変わらないのに賃金だけを引きさがる慣行が受け入られているわけではない」⇒労働契約法20条違反

「同じ働き方」かどうかは次の項目で決まる。
・仕事の内容
・移動や転勤の範囲

判決後、どう変わる?

元々、「労働契約法20条」の規定は正規社員と非正社員の不公平をなくす為の物。

そこに、厚労省の思惑から定年後の再契約の問題が絡んできた。
さらに、中小企業では人材確保の問題がある。

企業としては経費をできるあけ抑えたいので、「同じ働き方」でなければ同一賃金を支払う必要はなくなるので、この部分を変えてくるだろう。

そして、この問題は「定年後の再雇用」だけでなく「非正社員」に関しても言えることだ。

根本的に景気が回復する以外に「非正社員」や「定年後の再雇用」の賃金が上がることは難しいだろう。

ただ、年金を受給し始めると、給与+年金が一定金額を超えると年金がカットされる。
給料は多いと年金支給額が0円となるケースもある。
こうなると、定年後も定年前と同じ賃金をもらう事が果たしてメリットになるのかはトータル的に考えなければ結論が出ない。
(朝日新聞2016/5/14記事参照)