来春(2017年)卒業する大学生・大学院生への大手企業の採用選考が1日、解禁された。
面接などの採用選考は経団連の指針の見直しで、昨年(2015年)より2ヵ月前倒しとなり、今年の就職活動は「短期決戦」。
学生に有利な売り手市場の中、さらに企業が選考を早める動きもあり、あわただしい就職戦線となっている。
こういう場合、馬鹿を見るのはいつも当事者だ。

解禁時期の2ヵ月前倒しによる弊害

昨年の採用選考は8月解禁だったが、「就活の長期化につながる」などと批判され、経団連は6月解禁に繰り上げた。

しかし、会社説明化は昨年と同じ3月解禁で、結果、選考までの期間が短くなった(3月→6月/昨年は3月→8月)。

立命館大学の就職支援担当は、「企業の動き出しが早く、すでに選考が進んでいる学生もいる。一方で学生は企業研究が十分できていない傾向もあり、雇用のミスマッチが起きる恐れがある」と危惧する。

内定の現状

就職情報のリクルートキャリアによると、就職希望の大学生のうち、5月1日時点で内定を1社でも得た人は前年比4.3ポイント増の25%に上る。
近畿でも24.6%と前年より7.4ポイントも高い。

全体では解禁前に選考を進めている企業もあり、4分の1の学生が内定を持っている状況だ。

中小企業の採用活動

売り手市場とは言うものの、中小企業の採用活動は苦戦が見込まれ、各地の労働局や自治体が支援している。

大阪労働局は1,2日に大阪・梅田で説明会を開く。
中小企業など計24社が参加し、学生らに自社をPRする見込み。
京都市は4月、JR京都駅近くに企業と学生をつなぐ「就職支援センター」をつくり、イベントを企画している。

「解禁」時期を何故、変更するのか?

「解禁」には「会社説明会」の「解禁」と「採用選考」の「解禁」の2種類がある。

昨年は、「会社説明会」の「解禁」が早いと「学生が学業に専念できない」という意見があり、従来の大学3年の12月から3月に「解禁」を遅くした。
また、その分以上に「採用選考」の「解禁」を遅くし従来の4月から8月に変更した。

結果、従来は早い学生で4月に内定が決まっていたのが、8月になり、学生からすれば、「内定」を中々もらえないことに「あせり」が生じた。
また、大手企業の「内定」時期が遅くなったことは中小企業の採用にも悪影響を及ぼした。

即ち、大手企業に「内定」をもらえない学生が中小企業に流れてくるが遅くなり、中小企業の採用担当者をやきもきさせる結果となった。

結果、悪評を呼び、今年の「採用選考」の「解禁」は昨年より2ヵ月前倒しになった。

問題は「解禁」時期をコロコロ変えるところにある。
昨年、「解禁」時期の変更に関して賛否両論があったが、所詮、机上の論理である。
考える人間は、「上手くいかなければまた元に戻せばいい」と考えがちだが、当事者はたまったものではない。一生がかかっている問題だ。

何事も100%とはいかない。
長年の慣行を変えるには余程の理由が無ければならない。
今年、上手くいかなければまた、来年は時期を変更するのだろうか?
こういう変更は慎重しすぎても慎重過ぎるということはない。
(朝日新聞2016年6/1記事参照)