全国に広がる人手不足により、都心部でバイトの時給が上がる一方、被災地では工場の閉鎖も起きる。
東日本大震災後、景気回復に伴い人手不足が目立つようになったが、中心は求人の6割を占める非正規社員。
正社員に限れば、有効求人倍率は0.61倍と、なお「狭き門」だ。
人手不足がイコール雇用改善とは行かない。

有効求人倍率

有効求人倍率をみると、「接客・給仕」の倍率は2.54倍。
一般事務(0.32倍)などと異なり人手不足は深刻だ。

3大都市圏(首都圏、東海、関西)の居酒屋や料理店など「フード系」の平均時給は926円(リクルートジョブズ調べ)。

2年半続けて前年同月を上回るが、「仕事の忙しさに比べ易い」との指摘が耐えなかった。

それだけに人手不足を背景にした時給の引き上げは、働き手の待遇改善につながる動きだ。

牛丼店などの外食や小売業は、若者を低賃金で大量に雇い、低価格を売りに拡大してきたが、「こうしたビジネスモデルが立ち行かなくなっている」(リクルートジョブズ調べ)との指摘がある。

地方の人手不足

都市部に人口が流出する地方では、人手不足はより深刻だ。
東日本大震災の被災地では人手不足が常態化し、復興の遅れにもつながっている。

宮城県は5月下旬(2014年)、石巻市に建設する被災者向けの災害公営住宅を入札にかけたが、発注先が決まらなかった。
入札の不調は、最初の1月から3回連続。

応募しなかった多くの業者が理由に挙げたのが、「人手不足」だった。
型枠工や鉄筋工のほか、現場監督ができる人材も確保が難しい。

国土交通省は、建設作業員の賃金を引き上げるよう建設会社に求める。

国や県が発注額を決める際に、工事にかかる人件費の目安を順次引き上げた。

発注額が高くなり、建設業者は復興事業の人手を集め易くなるが、その分、建設以外の地場産業にしわ寄せが及ぶおそれがある。

人手不足の原因

「今回の人手不足の大きな要因は、若者の働き手の減少。若者の労働力に依存する業種ほど、人手不足が起きている」と第一生命経済研究所の主席エコノミストは指摘する。

ここ10年の労働力人口の変化をみると、少子化の影響で20歳代の働き手は300万人減った。

これに対し、60歳以上の働き手は310万人増。
とりわけ65以上のシニア層が161万人も増えた。

シニアの場合、建設現場やファストフードの深夜勤務等、肉体的な負担が大きい仕事は敬遠しがちだ。

結果、建設業や外食産業などが若者を奪い合う構図が出来ている。

さらに、最近の景気回復も、人手を集めにくくする。
安倍政権は景気対策の公共事業を増やし、建設業などの人手不足に拍車をかける。

対策

安倍政権は、女性や高齢者の働き手、技能実習生として受け入れる外国人労働者の数を増やす政策を、6月にまとめる新たな成長戦略に盛り込む。

人口が減るペースよりも早く、有効な手を打つことが求められている。
(朝日新聞2014/5/31記事より)