新しいタイプの睡眠薬「スボレキサント(商品名ベルソムラ)が、世界に先駆けて日本で11月下旬(2014年)にも発売される。
現在、日本で主に使われている睡眠薬は依存性が問題になっているが、新薬は、臨床試験(治験)では依存性が確認されていないという。
ベルソムラとは?
ベルソムラは、錠剤で、米製薬企業が開発。
脳の覚醒を維持する神経伝達物質の働きを抑えることで、脳を覚醒状態から睡眠状態に移らせるとしている。
不安を抑える別の神経伝達物質の働きを強めるなどの従来の薬とは作用が異なる。
日本人も参加した治験では、寝つきをよくし、睡眠を持続できる時間も長くなったという。
主な副作用は、うとうとすることや頭痛、疲労だった。
治験にかかわった久留米大の教授は「半年間の治験期間中、依存性は認められなかった」と説明する。
9月に承認され、近く販売価格が決まる。
用量は成人が1日1回20mg、高齢者は同15mg。
日本の不眠症患者と睡眠薬
不眠症は日本人の10人に1人が悩んでいるとされる。
厚生労働省研究班の調査によると、成人の20人に1人が睡眠薬を飲んでいるという。
日本で医師が処方している睡眠薬は、ベンゾジアヒン(BZ)系薬が8割近くを占める。
ほかに、副作用の少ない非BZ系薬や、睡眠のリズムを改善するメラトニン受容体作用薬があるが、長い間使われてきたBZ系薬が選ればれている。
睡眠薬の副作用
しかし、BZ系薬は、薬をやめられなくなる依存性などが問題化している。欧米では処方が控えられ、長期的な使用も制限されている。
こうした状況から、依存性のない薬の開発が待たれていた。
ただ、米食品医薬品局(FDA)はベルソムラを8月に認可した際、薬の影響が翌朝まで残るなどを理由に、日本人の成人用量の半分に当たる1日10mgからの使用を推奨した。
米国での発売は年明けになる見込み。
国立精神・神経医療研究センター長によると、米国では睡眠薬服用者の運転で起きる交通事故が問題となっており、FDAは睡眠薬全般に慎重な姿勢をとっているという。
(朝日新聞2014/11/5記事参照)