厚生労働省の労働政策審議会がまとめた報告書に、「残業代ゼロ」となる新しい働き方が盛り込まれた。
安倍政権が掲げる成長戦略の目玉の一つで、反対を続けた労働側は最後は押し切られた。

「残業代ゼロ」の理由

安倍首相は「労働時間に画一的な枠をはめる労働制度、社会の発想を大きく改めていかなければならない」と語り、なかなか手のつけられない「岩盤規制」とみなす雇用分野の改革に意欲を示す。

「残業代ゼロ」となる働き方をつくるのは、その岩盤規制に風穴を開ける改革という位置づけだ。

首相は「時間ではなく、成果で評価する新たな労働制度を選べるようにする」として、政権の成長戦略にこの制度の創設を盛り込んだ。

「残業代ゼロ」の対象者

今回の対象者は「年収1千万円以上、高度な職業能力を有する労働者」と昨夏の成長戦略で大枠は決定済み。

労働、経営、有識者の3者で構成される労政審に求められたのは、その大枠の範囲内で細かい制度を検討することだった。

今回の報告書では、対象となる働き手に対し、企業は年間104日の休日を取得させることなどを条件に、働いた時間にかかわらず残業代や深夜・休日手当を支払わなくてもよい、とした。

対象となる職種は為替ディーラーやアナリストなど一部には限定された。
企業からは「使い勝手が悪いのでは」との見方も出ている。

裁量労働制と「残業代ゼロ」の違い

「残業代ゼロ」というとよく似た制度に裁量労働制があるが、何が違うのだろうか?

裁量労働制は、労使であらかじめ想定した労働時間に応じ、残業代を含めて賃金が支払われる。
研究者や弁護士ら専門職や企画・調査部門などを対象とする。

実際に働いた時間が想定を超えても追加の残業代は出ないが、深夜や休日に働いた場合の割増賃金は出る。
年収による条件はない。

「残業代ゼロ」となる働き方は残業や深夜、休日の割増賃金が一切出ない。
(朝日新聞2015/2/14記事参照)

コメント

元々、労働基準法に「労働時間」「休日」等の規約があり、割増料金の支払義務が発生するのはそのことによって労働者が長時間労働を強いられることを抑制することにある。

労働者の労働条件を定める法律が現実とかけ離れているのなら改正を理解できるが、今回の「残業代ゼロ」は政策的なもので、大企業の思惑がうかがえる。
大企業が労働者を「残業代ゼロ」で働かせることができるというだけのものだ。

こういうことを進めるならその前にブラック企業での長時間労働を含む労働基準法違反をしっかり取り締まるべきだろう。