介護のための休みを取りやすくする育児・介護休業法の改正案などが、衆院本会議で審議入りした。(2016年3月8日)
なぜ、改正が必要なのか?
育児・介護休業法が抱える問題点とは?

改正法案の内容

改正法案の主な内容は次の通り。
・介護休業を3回まで分割して取得できるように
・介護休暇の半日単位の取得を認め、残業免除の制度を創設
・介護休業給付の給付率を賃金40%から67%に
・有期契約労働者の育児休業の取得要件を緩和
・上司らのマタニティー・ハラスメント防止の措置を義務づけ
・失業給付にあてる雇用保険料を1.0%から0.8%に
・65歳以降に新たな雇用される人も雇用保険の適用対象に
・シルバー人材センター部業務で週40時間の就業を可能に
(朝日新聞2016/3/9記事参照)

育児・介護休業法とは?

育児・介護休業法の目的を条文から抜粋する。

育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇及び介護休暇に関する制度を設けるとともに、
育児及び家族の介護を行いやすくするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか、
育児又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、
このような労働者が退職せずに済むようにし、その雇用の継続を図るとともに、
育児又は家族の介護のために退職した労働者の再就職の促進を図ることとしています。
育児及び家族の介護を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるよう支援することによって、
その福祉を増進するとともに、あわせて、我が国の経済及び社会の発展に資すことを目的としているものです。

育児・介護休業法の問題点

上記の目的条文から察するには育児・介護休業法の目的は、育児・介護休業を取得した労働者の雇用を継続することにある。

それを踏まえて、ここでは介護休業法の問題点について取り上げる。

介護関係では介護保険法がある。
これは一家族で介護を必要とする家族の面倒を見るのを社会全体で支え合うことを目的にしている。

一方、介護休業法は両親等の介護を子供等が見る為に会社を休む場合の措置である。

はっきり言って、介護保険法と介護休業法の目指すところは逆である。
なぜ、介護休業法を改正をしてまで政府はことさら推進するのか?

それは増大する介護費による介護財政がひっ迫しているからだ。
さらに介護保険法が足かせとなり、介護の現場で働く人の給料が低いことから、人材が集まらない。
そして、何故、労働者が介護の必要がある家族の面倒を見るかというと、介護保険があると言っても、実際には予想を超える費用がかかり、支払ができないからだ。
例えば、介護付き老人ホームに預けるには月々相当な費用が必要。

政府としては、介護保険法の趣旨とは相反する介護休業法に力を入れ、労働者に介護を分担してもらい、増大する介護費に歯止めをかけようとしている。

しかし、そこでネックとなるのが「休業期間」。
「要介護状態になるごとに1回、通算93日まで」という条件。

三菱総合研究所が2014年度に介護経験者に実施した調査では、在宅介護期間は平均で約30カ月(2.5年)との結果が示された。

さらに、介護休業を取ったことのある人の半分近くが休みの日数が「不十分」だったと答えた。

「93日(3か月)」ではまるで足りないのである。
政府は元々、この期間を「介護」の期間ではなく、「介護の打合せ」の時間だと考えていたようだ。
これなら、介護保険法とすんなりつながる。

しかし、現在、当初の趣旨とは逆に方向に向かっている。
問題が発生するのは当たり前と言えば当たり前のことである。