介護保険サービスの公定価格「介護報酬」の改定について、厚生労働省が、基本的な方向性を示し、本格的な議論が始まった。
在宅介護の推進や介護人材の確保に向けた処遇改善が柱。

在宅介護の強化

団塊の世代が75歳以上となる2025年をみすえ、介護需要の急増で介護保険制度が破綻しないように在宅重視の改革をすすめる。

在宅介護強化のためには、医療や介護、住宅、生活支援サービスなどが切れ目なく受けられる「地域包括ケアシステム」の確立が急務。

そこで、前回2012年度の改定で、中核となる対策として、24時間365日体制で看護と介護を提供する「定期巡回・随時対応サービス」などが新設された。

介護の現場

だが、普及は遅れ、市区町村などの約1700保険者のうち230保険者にとどまる。

早朝や深夜に働く看護師やヘルパーの確保が難しいことなどが課題と指摘される。

厚労省は今回改定で報酬を増やして普及を目指す考え。

認知症は65歳以上の7人に1人と推計される。
施設や入院での対応は限界がある。

報酬改定では、地域で暮らす認知症の人にサービスを提供した場合の報酬加算の拡充などが論点となりそうだ。

人材確保対策

介護現場での人手不足は深刻で、2025年までに100万人増やす必要があるとされる。

低賃金が要因の一つで、国はこれまで交付金や介護報酬に加算する形で賃金アップを図ってきた。
厚労省は、今回の報酬改正でさらなら賃金アップを目指す。
(朝日新聞2014/10/16記事より)

≪コメント≫
お金をばらまくだけでは問題の解決にならない。

厚労省は2009年に介護職員1人あたり月に1万5千円を事業所に補助する「介護職員処遇改善交付金」の制度を設け、2010年の調査で、「9割近い事務所が制度を使い、これらの事業所では給料が月に約1万5千円上がった」というのだが、この数字には疑問が多い。

「交付金が恒久的に出続けないだろうとみなす運営者が多かったため、ボーナスなどの一時金で出ることが多く、本質的な待遇改善にはつながっていない」という分析もあり、単に事業者の懐がうるおっただけではないか。
介護報酬の改定で介護職員の給料は上がるのか?