雇用の維持をめざし、経営難の企業の人件費を国が一部負担する「雇用調整助成金」で、2009年~2013年度に1265社、191億円の不正受給があたことが厚生労働省のまとめでわかった。
何故、不正受給がまかり通るのか?

「雇用調整助成金」とは?

「雇用調整助成金」は、売上げ急減した企業が社員を解雇せず、休業にとどめれば、1人1日7805円を上限に休業手当の最大3分の2を国が補うなどしている。

「雇用調整助成金」受給の現状

2009年~2013年度、月5千~10万社が申請し、支給額は計1兆3815億円。
だが、社員が働いているのに休業させたという虚偽の申請などで、2009年91社8億円、2010年度355社37億円、2011年度295社60億円、2013年度185社34億円の不正受給があった。

厚労省は不正受給の返還を求めるが、企業が倒産して返還が見込めないケースもある。

2010年11月から不正申請した企業名を公表し、今年度から労働局が訪問調査を強化をしている。

「雇用調整助成金」不正受給の背景

「労働局のチェックが甘く、不正できると思った」。
今年、5千万円超の不正受給を指摘された関東地方の50代社長は話す。

2009年、社員20人を休業させ、助成金を申請。
分厚い申請書類を経理担当者が労働局に持っていくと、何の指摘も受けず、書類が通ったという。

最初の申請から9ヶ月目。
「書類は素通り」と経理担当者から言われた社長は、追加で勤務中の社員2人も「休業」と偽り、助成金は月計50万円増えた。

不正受給が発覚したのは昨春(2013年)。
労働局が監査に入り、労働局に提出した休業社員一覧と出勤簿の整合性が問われ、不正を認めたという。
(朝日新聞2014/9/22記事より)

コメント

「雇用調整助成金」は「国が一部負担」とあるのは国債によって、そして企業が支出する雇用保険二事業が原資となっている。

労働局のチェックが甘いのは「自分の金ではない」、「責任を追及されることがない」といったところに原因があると思う。

しかし、申請する企業が急増し、原資が枯渇しかかっているのでチェックをせざるを得なくなったということだろう。

常々思うことことだが、お金のばら撒きは問題が多い(というか、問題だらけ)。
只でもらえるとなると必ず不正が生じる。

では、チェックを強化すれば良いかというと、その為の人的コストが馬鹿にならない。

結局、チェックはごく一部になり、不正受給の摘発を逃れる企業が少なからず存在するという事態を生む。

制度に問題があると言わざるを得ない。

さらに、「雇用調整助成金」により、本来なら失業者としてカウントされる人がカウント外になることで見かけ上の失業率が抑えられるという政府お得意の数字操作の問題も生じる。

そもそも雇用調整が必要になるのは政府が景気を回復する施策をとっていないことに原因がある。