IT企業が集まる米サンフランシスコ周辺に、短期間でプログラミング技術をたたき込む講習コースが次々と生まれている。
その内容の厳しさから、軍隊の新人訓練になぞられて「ブートキャンプ」とも呼ばれる。
高額な授業料。なぜ、若者に人気なのか?
ブートキャンプとは?
ブートキャンプとはもともとは米軍の新入隊員の訓練のこと。
米国では、運動や技能などを見につける短期集中型の特訓を指す言葉としても使われる。
日本ではエクササイズのDVD「ビリーズブートキャンプ」がはやった。
講習の内容
ブートキャンプの中でも高額な授業料と、入学ハードルの高さで知られるのが「ハックリアクター」。
受講するには、平均40時間かかるとい最初の課題をクリアする必要がある。
初心者はウェブ上の相談窓口が頼り。
この時点でよほどの根気がなければふるい落とされることになる。
通過すると、さらに150時間かかる課題が待っている。
それを通ると、ようやく学ぶ意欲を見るための面接試験。
最終的に入学が認められるのは応募者の3%程度で、名門大学以上の競争率だ。
ハックリアクターの授業料は1日11時間、週6日の3ヶ月コースで約18,000ドル(約214万円)。
若者が講座に参加する理由
ハックリアクターの卒業生は99%の就職率を誇るという。
就職先はグーグル、フェイスブック、アップルといったシリコンバレーの大手企業からスタートアップと呼ばれる新興企業まで多岐にわたる。
卒業生の初年度の平均年収は約10万5千ドル(約1,250万円)という。
ブートキャンプの売りは徹底的な実用性。
大手ブートキャンプのゼネラルアセンブリー(GA)もハックリアクターも「即戦力を育てるため、カリキュラムも企業側と相談しながら決めている」という。
ネット上の報告書「コースリポート」によると、ブートキャンプを終了した人の給付は平均で44%上がり、上昇額は25,000ドル(約297万円)という。
受講生に聞くと、高額な受講料も「終了後に上乗せされる給料を考えれば安いもの」という声も多い。
プログラミング講座人気の背景
プログラミング講座が広がりを見せる背景には、好況のシリコンバレーでプログラマーが足りず、引く手あまたの現状がある。
企業間の従業員の獲得競争が激しく、アップル、グーグル、インテルなどが賃金を談合し、互いに引き抜きをしないという秘密裏の約束を交わしていたことも明らかになっている。
「企業側は優秀なプログラマーを常に探している。しかし、大学ではコンピューターサイエンスの概念を教えるだけで、実際に役立つ最先端のプログラミングも、実践的な仕事も教えない。ここにブートキャンプが生まれる余地がある」とハックリアクターの最高経営責任者(CEO)はいう。
(朝日新聞2014/12/3記事参照)