働いた時間にかかわらず、賃金が一定になる働き方(残業代ゼロ)をめぐる政府内の議論が、平行線をたどっている。
5月末(2014年)に方向性が出る見通しだが、どうなる?

推進派の主張

いまは会社が従業員を1日8時間超えて働かせたり、深夜や休日に出勤させたりすると、賃金に上乗せしてお金を払う義務がある。

これに対し、時間ではなく仕事の成果にお金を払う働き方を、経済同友会代表幹事の長谷川氏が提案。

長谷川提案は、年収1千万円以上の専門知識などを持つ人に加え、労使が合意すれば年収の低い一般社員を対象にする。

たとえば介護や子育て中の女性が働き易くなるともいう。

長谷川氏は「企業が競争力を高めるため、柔軟な働き方の選択肢をつくりたい」と今回提案した理由を語る。

反対派の主張

政府内でも厚労省は慎重だ。
厚労相は「会社と比べて働き手の力は弱い」と労働者が望まない同意を迫られる点を懸念する。
ただ、厚労省「高年収者に限っては検討の余地がある」という立場。
高年収者に限った場合でも、第一次安倍政権下で撤回されたWE(ホワイトカラー・エグゼンプション」とほぼ変わらず、議論をよびそうだ。

公明党は「サービス残業の合法化につながる」と官邸に申し入れし、労働関連の専門家からは「過重な労働に歯止めがなくなる」との批判が多く、連合は「どんな手を使っても阻止する」と猛反対する。

推進派VS反対派

推進派の長谷川氏の反対意見に対する主張は次のとおり。

●長時間労働を招くとの懸念が相次いでいるが?
「労使合意もあるし、最終的には本人の判断。
うまくいかなければ、元の働き方に戻れる仕組みだ。
「ブラック企業」が悪用するとの批判もあるが、まずは労働者の権利をしっかり守れる企業にだけ認めればいい」

●働き手が「同意」を強いられないか?
「そうならないよう守るのが労組の役割のはず。労働基準監督署もしっかり見ないといけない」

●反発は覚悟の上ということか?
「かつて反対が強かったのは確かだが、いろんな選択肢を提供するのが時代の要請。
厚労省もダメというなら、逆にどう経済成長に貢献するのか代案を示してほしい」

●一般の社員にも広げる必要はあるのか?
「次期により繁閑の差が大きい仕事、たとえば新商品や店舗開設の担当者や、デザイナーなど専門性の高い仕事には、時間に縛られず柔軟にはたらけたらいいというニーズがある」

●目的は人件費を減らすことか?
「賃金はいまの残業時間も考慮した水準を目安に決めればいい。成果さえ出せば、少ない労働時間でもおなじ金額をもらえるようにもなる」
(朝日新聞2014/5/22記事より)

コメント

推進派の提案は企業側にたった内容だ。
要はコストゼロで残業させたいということだろう。

元々、一定の役職以上は残業代はつかない。

そもそも、労働基準法は弱い立場の労働者を守る法律だ。
しかし、法律が無視され、ブラック企業で長時間労働等を強いられているのが現状。

「残業代ゼロ」を議論する前にまず、現在生じている問題を解決する方が先だろう。

第一、国は「残業ゼロ」を推進していたはず。
それが、「残業代ゼロ」にすり替わっている。

「残業代ゼロ」が法律で認められればブラック企業を肯定することになり、歯止めはつかなくなる。