人手不足が広がりをみせている。
飲食店や小売り、建設工事だけでなく、製造業の現場でも人が足りなくなり、企業は働き手を確保するため、バイト代やパート代を引き上げている。
失業率は低水準となったとは言え、4%弱。
一体何が起きているのだろうか?人手不足の背景とは?

人手不足の現場

人が集まらず、経営に影響のある会社も出てきた。

◇すき家
「すき家」を展開するゼンショーホールディングスは2月から4月にかけて人手不足を理由に123店で休業し、124店が深夜・早朝営業を休止した。
アルバイト女性は「2月に始めた牛すき定食が牛丼より手間がかかり、負担ばかり増えて『やってられない』と辞める人が相次いだ」という。

◇ワタミ
居酒屋大手ワタミも今年度中に全店舗の約1割にあたる60店舗を閉鎖する。「労働環境の改善」が目的。

◇製造業
近畿地方では、低迷を脱しつつある製造業でも人手不足が目立ち始めている。
「人さえいれば、もっと作れるのに」と業務用機器をつくる中西製作所の幹部は肩を落とす。

◇IT業界
活況が戻ったIT業界にも人で不足が波及する。
あるIT企業は、家電メーカーからソフト開発の注文が次々と来るが「応じきれずに断ることがある」と明かす。
中途採用の対象を未経験者にも広げ、人手を集めようとしている。

◇建設業界
東京五輪招致にわく建設業界での人で不足は、全国的な問題になっている。
東日本大震災の被災地・宮城県が2013年度に発注した公共工事の入札のうち、約26%が落札されず、「不調」に終わった。

人手不足の背景

人口減少と少子高齢化が進む中、この先も働き手が大きく増えることは考えにくい。
景気回復も重なり、今後、人出不足が慢性化する可能性も出てきた。

ただ、現在の求人の中心は、契約社員やパートといった短期雇用の非正規社員が占める。

仕事を探す人が求める職と企業の需要にもズレがあるのが実情。

求職者1人に何人分の仕事があるかを示す有効求人倍率を職種別にみるとその差は歴然だ。

求職者の4分の1が希望する「一般事務」は0.28倍で、100人の希望者に28人分の仕事しかないことを示す。

一方、飲食店で働く「接客・給仕」は2.64倍、「建築・土木・測量技術者」は3.97倍と、求職者と企業との間でのミスマッチが著しい。

企業の対応

不足する人手不足の確保に向け、待遇を引き上げる企業が相次ぐ。

パートやアルバイトが中心だった従業員を正社員に切り替える動きも広がる。
(朝日新聞2014/5/2記事より)

コメント

完全失業率が下がっていると言っても、要は、求職者が希望する職は増えておらず、差は広がるばかり。

完全失業率という定義そのものを見直さなければ実態を反映できないかもしれない。

求職と求人のミスマッチを解消するには未経験者がその業種で仕事がスムーズにこなせるような職業訓練こそが必要だと考える。

現在の職業訓練は就職につながらないモノが多い。

日銀総裁は今の状況を「完全雇用状態」に近いと言っているが、現実とは程遠い。
表面の数字しか見ていない人間に金融政策をまかせるのは危険ではないだろうか。