刑務所や少年院を出た人の社会復帰を支援するため、出所者を雇っている「協力雇用主」に対し、公共事業の入札で優遇策を設ける自治体が増えている。

出所者雇用とは?

仕事があれば再犯率が低いという傾向があり、罪を犯した人が働ける「受け皿」を広げるのが狙い。

法務省は来年度から受け入れ事業者に対し、奨励金として年間最大で1人あたり約72万円を支給する方向で検討している。

法務省が、2012年までの5年間に保護観察を終えた約19万人を調査したところ、再犯率は仕事に就いている人が約7%、無職は約30%に上った。

このため、出所者が働ける場所の整備が急務になっていた。

岩手県の取り組み

岩手県は2005年、全国に先駆け、入札参加資格を数値化した名簿に掲載する際に加点し、公共工事を受注しやすくする優遇措置を導入。

その後、山形県など全国に広まり、6月末(2014年)で43自治体が同様の取り組みをしている。

兵庫県の取り組み

兵庫県は昨年度、協力雇用主に仕事を発注する元請け業者も入札で優遇する対象に加えた。

昨年度(2013年)の入札では12社が対象となり、前年度(3社)から多く増えた。

出所者らを雇った事業主に4ヶ月の訓練費用(1人あたり約92万円)を補助している。

同県尼崎市で出所者を雇い、売上げの大半が公共工事という建設業者は「自治体が社会貢献と認めて応援してくれることが励みになる」と取り組みへの意義を話している。

出所者雇用の問題点

国もこうした取り組みを後押ししている。
2006年には仕事中のトラブルなどで雇用主に被害が生じた場合、一部を見舞金として支給する制度を設けた。

全国の保護観察所に登録する事業者数は2009年に約7700だったが、今年4月時点で1万2千をこている。

課題もある。
協力雇用主は増えたが、実際に雇用されているのは約1200人しかいなかった。

重い罪を犯した人ほど就職は難しく、雇ってもらっても定着しないケースも多い。
協力雇用主が雇った保護観察対象者のうち約4割が半年以内に退職していた。
同省社会復帰支援室の担当者は「幅広い業種に登録してもらい、支援を拡充したい」としている。(朝日新聞2014/9/23記事より)